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| サーフブンガクカマクラ
![]() 去る今年の3月、ASIAN KUNG-FU GENERATIONが『ワールド ワールド ワールド』をリリースした際に、自分は「アジカンを検証する」というテーマの記事を書いたことがあった。 その記事は、『ワールド ワールド ワールド』のリリースに至るまでの彼らの活動履歴と、彼らがこれまでに日本の音楽シーンに与えてきた影響を整理し、その上で『ワールド ワールド ワールド』という作品を批評するという内容だったが、その時は「失敗作」という言葉まで使って説明した『ワールド ワールド ワールド』は、やはり今でも好きになれない。 所謂「下北系ギターロック」的なソングライティングにはとにかく共感出来なかったし、直接的な表現が増えた後藤正文のリリックもやや空回りな印象で、それが凡百のギターロックバンドによる仕事ならまだわかるが、それをわざわざアジカンという日本の音楽シーンを背負って立つべき(言い過ぎではないはず)バンドが鳴らすことに必然性を感じられなかった。 その後リリースされたミニアルバム『未だ見ぬ明日に』も同じような内容だったことから、当時は本当に、アジカンはもう駄目かと思ったものだった。 と、自分の中では評価が完全に下降線を辿っていたアジカンだが、11月の頭にリリースした今年2枚目にあたるアルバム『サーフブンガクカマクラ』は、『ワールド ワールド ワールド』『未だ見ぬ明日に』で溜まった鬱憤を晴らすような、極めて爽快な内容。 タイトルが示すとおりこのアルバムは、神奈川県は藤沢から鎌倉までを結ぶ、通称<江ノ電>こと江ノ島電鉄の駅を文字ったタイトルの「藤沢ルーザー」「鵠沼サーフ」「江ノ島エスカー」「腰越クライベイビー」「七里ヶ浜スカイウォーク」「稲村ヶ崎ジェーン」「極楽寺ハートブレイク」「長谷サンズ」「由比ガ浜カイト」「鎌倉グッドバイ」の10曲が並ぶという、非常にユニークなアイデアで構成されている。 サウンド面でも初期の『崩壊アンプリファー』を思わせる、WEEZERの『ブルーアルバム』とASHの『1977』の間を行く単純明快なパワーポップ曲がずらりと並んでいる。 しかも「江ノ電を舞台とした青春劇」を意識して書かれた今作での後藤のリリックは、思わず駆け出したくなる衝動や、移り行く情景から感じさせる叙情性をうまく描きいていて、『ワールド ワールド ワールド』では不完全燃焼だった直接的な表現が、今回は見事に花開いている。 1曲目「藤沢ルーザー」冒頭での、 “割と良くある日々のすれ違いを/他人のせいにして拗ねる/心揺れる 独り善がりの僕は筋違いを/抱えたままで抜けて折れる一号線” という颯爽としたアルバムの始まり方も良い。 この曲では2回目のコーラスの部分で、 “そうだ/高いリール買おうか/今日はほら/天気がいいから 社会人/ライナー/三番線のホームから今/手を振るよ” と歌っているが、これは仕事をサボって釣具屋で良いリールを買って、江ノ電に乗って釣りに出かけるというストーリーらしく、“三番線のホームから今/手を振るよ”というフレーズは、自分の日常を縛り付ける事柄を“三番線(=藤沢駅の湘南新宿ラインのホーム)”に例え、それに向かって大きく手を振って日常から飛び出し、今まさに何かが始まる瞬間独特の気持ち良さがこの曲にはある。 ASIAN KUNG-FU GENERATION/藤沢ルーザー (このビデオはどうなんでしょう) アルバム後半には、「馳せ参ず」を掛けたメランコリックな名パワーポップ曲「長谷サンズ」や、見上げた空に欠落した感情を重ねた「由比ヶ浜カイト」といった哀愁観漂う曲が並び、「アジカンにとってここまで直接的なラブソングは初なのでは?」と思わしき「鎌倉グッドバイ」でこのアルバムはゆったりと終点を迎える。 これまで良い意味で頭の堅かったアジカンが、今作ではサウンド/リリック面で自らに制約を与えることなく、フリースタイルから音楽を生むことにとにかく意識的になったことで、本来なら二度と取り戻すことの出来ないはずの初期衝動と、嬉し恥ずかしな初々しさを取り戻すこととなった、素晴らしい回帰作と言えよう。 ■最近よく聴いているもの ASIAN KUNG-FU GENERATION 『サーフブンガクカマクラ』 ry01
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